2020.03.29 #ヒトリアニ はじめてのアニクラDJ本番を振り返る
3月29日におこなわれたオンライン配信型のアニクラDJフェス「ヒトリアニ」のDJ振り返りです。私は2番手、11:40〜12:20という比較的早い時間を受け持たせてもらいました。
Twitch録画はこちらです。こちらをご覧になりながらお目を通していただけると、より楽しく読めるかと思います。
witchdoktor0403のダイジェスト:witch_doktor's LiveCast #ヒトリアニ 2番手 3/29 11:40〜をwww.twitch.tvから視聴する
2020/04/05 追記
一部の音がTwitchでミュートされましたので、Mixcloud上げたもの(音声のみ)を参考までに置いておきます。
#ヒトリアニ とは
2020年のコロナウィルス感染症(COVID-19)拡大を受けて延期された、野外フェス「Re:animation 14」。
この延期を受けて出演者のひとりである、ミュージシャンのヒゲドライバー氏 ※1が「当日ひとりでDJ配信を届ける」とTwitterで発表したことからはじまった、配信をリレーする方式のアニソンDJフェスです。新型ウイルス感染が大規模な広がりを見せ、日本全体に憂鬱な雰囲気が漂う日曜日、2020年3月29日におこなわれました ※2。詳しい経緯はこちらの記事をご覧ください。
※1 私にとっては大好きなデレマス楽曲の作家のひとりであり、チップチューンのレジェンドであり、雲の上の人です。
※2 あとの記録のために書き残しておくと志村けん氏の命日でもあります。翌日に彼の死が発表されましたが、楽しかった29日との落差がすごく、とても脱力した気持ちになりました。
以下、タイムテーブル・DJ陣です。
参加の経緯
昨日言ってた件、改めて募集しようと思います!もし参加したいっていうDJの方いたら、お気軽にDMとかでご連絡ください!29日昼からの予定です! #ヒトリアニ https://t.co/GNLMUVgMQR
— ヒゲドライバー (@higedriver) 2020年3月16日
こちらのヒゲドライバー氏(以下ヒゲ氏)の呼びかけのツイートは私も見ていて、自分にもDJ配信経験があり、ちょっとは気になってはいたのですが、私は基本ハウスのDJであってアニソンDJの経験はほとんどない(リスナーではあります)し、誰か素敵な方がガンガン手を上げてあっという間にタイムテーブルがいっぱいになるんだろうと思っていたのです。
ところがそれから3日後、ヒゲ氏のこんなツイートが。
#ヒトリアニ 、もう少しDJさん集まると、お祭りっぽくできてありがたいので、ご興味ある方、ぜひお気軽にDMを!29日お昼から予定です! https://t.co/GNLMUVgMQR
— ヒゲドライバー (@higedriver) 2020年3月19日
えーおいおいおい、こんなステキな話またとないぞ、誰も手を上げないのなら無茶を承知でやってみようと思い、勢いだけで「アニソンDJ経験はほとんどないのですがそれでもよろしければ…」と前置きした上でヒゲ氏にDM。あ、一応DJ経験者であることは示すために、自分のMixcloudアカウントのURLは添えました。
するとあれよあれよと話が決まり、出演が決まったという流れです。なんでもやってみるものであります。
選曲するにあたって参考にした記事・動画があります
ということで、アニクラDJを配信とはいえ人前でやるのは初めて(Mixは録ったことがある)でして、しかも多くの方が視聴されることはまず間違いなしのイベントです。とにかく出演が決まってから本番までの10日間、私に必要なのは自分のカンだとか経験ではなく、先人による、アニクラDJをやるにあたっての選曲の基準・モノサシでした。それも実践的なやつ。ブートキャンプ。なんたって初めてなのに大舞台なのです。プライドもなにもあったものではありません。
そこではたと思いついたのが、こちらの記事でした。
夏にハウスのイベント「夏4B」で知った、声優レアグルーヴのDJ、ISHIIさんによる振り返り記事です。紹介した記事にあるマトリさんのTwitchと聴きくらべてもらうと分かるかと思いますが、私の選曲・流れはほとんど彼が記事中で紹介した3つの原則を踏襲しています。
①選曲は声優楽曲原曲中心
②いくつかのブロックに分けBPMを大きく展開させる
③『情報量が多いとヤバい』理論に乗っ取り、要素を多く入れる
①については、あまりリミックスの数をもっていないということもあるんですが、やはり原曲のよさをガンガン出していきたいという気持ちはありました。自分がデレマスPであり、そのコンポーザーとして大活躍されているカラスヤサボウ(烏屋茶房)さんのヒトリアニへの参戦も決定したということで、もしかしたら見てくれる彼にリスペクトを示したいという気持ちというか色気もあり、結果として原曲中心の構成になりました。
②は4つ打ち中心の私には苦手なところなのでかなり練習が必要なところでした(大体ハウスDJは1分超えのロングミックスが多く、BPMに大きな変化がないことが多い)。これはセットリストを決めてから気合でやりました。
ただし私の場合、幅はそれほど広くなく、BPM130から160あたりまでじわじわと上げていき、その後120にストンと落とす、あとは130程度までじわりと上げ、最後に140に着地、というくらいの流れです。アニソンに多いBPMである170〜190あたりにはしていません。結果そこが他の方に比べての特色っぽくなったかもしれません。
③については、実際に参考記事のISHIIさんのプレイを聞き、解説を読み、どう曲のバラエティを出しているのかをよく考えました。私とISHIIさん、同じく割り当てられた40分のどこでどういう音を割り当てているのか、そこを読みつつ、彼のセットリストをパクるのではなく、自分の手持ちの楽曲でやるならどうなるだろう…と思いながら組み立てていったという感じです。くわしくはつづく各曲の解説で述べます。
セットリストと各ブロックの曲解説
セットリストは以下の通りです。
ちょっと恥ずかしいことではありますが、配信型イベントであり視聴者の顔も見えないのでほぼ完全にセットは決め打ちでいきました。あまりに反応がないなどの非常時に備えてそれなりにリザーブ曲は用意していましたが幸いなことにこれを変更する必要はありませんでした(最後の一曲を除いては)。
第一ブロック(1〜6曲目)
1曲目〜6曲目はISHIIさんの理論の言葉を借りると慣らしのパートです。まだ雰囲気が固い中、いろいろな音を次々に取り替えて聴いていただくイメージでやっています。アニクラファンの皆さんからすれば私の知名度はゼロですし、まずこちらが見せられる幅と好きな分野(デレマス)を知ってもらおうという意図です。
この場面、Twitchでの「色んなとこからいろんなとこへつながって楽しい」というコメントには我が意を得たりという感じがして、心中で軽くガッツポーズをしたのを覚えています。
1. きみにいっぱい☆ / 姫川友紀 (CV: 杜野まこ), 市原仁奈 (CV: 久野美咲), 片桐早苗 (CV: 和氣あず未), 大槻唯 (CV: 山下七海) & 相葉夕美 (CV: 木村珠莉)
2. GABURINCHO OF MUSIC! / キョウリュウジャー, 高取ヒデアキ & 鎌田章吾
1、2曲目はデレマスとスーパー戦隊シリーズからサンバ調の楽曲をセレクト、しょっぱなからまったりと祝祭感を出していきます。配信会場が前のDJ、クランプクロウさんと変わるということもあり、遅れて入ってもらってもいいように、最初の2曲は同じ調子のものを続けました。サンバには昔から弱く、どちらも大好きな曲です。たまらん。
3. Carve a Life / 悠木 碧
3曲目はすみません、参考にしてるうちに私本人がとても気に入ってしまって、ISHIIさんのセットからそのままいただいています。声優・悠木碧さんの楽曲です。ISHIIさんの「ジェネリックシュガビタ」という表現、ちょっと笑ってしまった。
4. ヘイ!!にゃん♥ / さよならポニーテール
さらに4曲目もすみません、これはセット中唯一、アニメ・ゲームの文脈の音ではありません。ただこのさよならポニーテールというグループはきわめてその実在性が希薄になるようにプロモートされており、なんとなくセレクトしてしまってからアニソンでないことに気づいたのでした。
5. O-Ku-Ri-Mo-No Sunday! (M@STER VERSION) / 久川凪 (CV: 立花日菜) & 久川颯 (CV: 長江里加)
6. 恋色エナジー / 中野有香 (CV: 下地紫野)
5曲目、6曲目でようやくデレマスPとしての名刺を出してくるイメージ。久川凪さん担当Pとして、また今回共演のカラスヤサボウさんへのリスペクトを表しての『O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!』からの『恋色エナジー』。凪さんの「おもしろ君さん」前説ゼリフや間奏ラップを全部からめた、アニソンDJとしては比較的長めのミックスを入れることで4つ打ちDJとしての名刺もついでに差し出しております。
第二ブロック(7〜9曲目)
ISHIIさん解説の表現を借りると「ピーク1回目→ピークアウト」のブロック。
7. SWEET BREEZE 1234 / Escalator Team
ひとつめのピークは8曲目、ヒゲ氏による今回のヒトリアニを象徴する楽曲『たべられません』に決めていたので、その前にグッと毛色の違う、ピークにもっていけるやつがほしい…ということで7曲目に選んだのがビーマニ5鍵・CLUB MIX(ビーマニで一番好きなやつ)からのド変態ビッグビート「SWEET BREEZE 1234」。「たべられません」につながる生音っぽさもありつつ、オシャレさと狂気のバランスがほどよく、我ながらよく選んだと思っています。
8. たべられません / ヒゲドライバー
映像に息子氏が偶然(ホント偶然です)映り込みはじめ、コメント欄も温まってきた中での『たべられません』で無事いちどめのピークに。今回のCOVID-19禍による音楽業界へのダメージに対するカウンターソングであり、ぜひYouTubeなどで歌詞とともに味わってほしい一曲です。なお音源はヒゲ氏に今回の使用を事前に打診してお譲りいただきました。ヒゲさん、本当にありがとうございました。大切にします。
9. Tsuku Yomi Mode / Dimitri From Paris
ピークアウトはISHII氏の『Neco Mimi Mode』に倣って、そのB面曲ともいえる『Tsuku Yomi Mode』で一気にテンポダウン。Dimitri From ParisにはハウスDJとして何度もお世話になってきたけど、ここでもお世話になるなんて…と感慨深いものがある。
第三ブロック(10〜12曲目)
10. 白金ディスコ / 阿良々木月火(井口裕香)
12. pink monsoon / シェリル・ノーム starring May'n
ゆらゆらゆったりするけど甘めの曲と声の良さでぶん殴るゾーン。
BPM110台の曲でしっかりフロアのムードを作っておくとその後テンポを上げたときにハネやすい気がする。
というISHIIさんの理論に首がもげるほど頷いた私はBPM110〜120台でいい感じのボーカル楽曲をネットの海から探し出し、偽物語から『白金ディスコ』とマクロスFから『pink monsoon』を発掘(すみません、最近知ったんです)。『白金ディスコ』はアイマスPにもおなじみ、MONACAの神前暁さんの作品であり、井口裕香さんのボーカルの魅力が存分に込められた一曲で文句なし。「pink monsoon」はたまたまリミックスがSoundCloudから紹介されて原曲を聴いた流れで知りました。ある種アニソンらしくないグルーヴ感のある楽曲で、全然これまでと違うダンサブルさがあって混ぜるとおもしろい感じになりました。
とりあえず 阿良々木月火さんがかわいいので偽物語はこれから見ます。ネタバレ踏みかけたけど踏んでないよ!
11. Treat or Goblins / 林原めぐみ
間をつなぐ林原めぐみさんの『Treat or Goblins(from アベノ橋魔法☆商店街)』は、実は後ろで踊っていた妻の発案です。実は妻は私をはるかに超えるオタクで、'90年後半〜'00年前半のTVアニメはかなりの数見ています。彼女の引き出しははるかに私より多いので、私は「こういう音がほしい」と伝えると、こういうすごいものを出してきたりします。頭が上がりません。
第四ブロック(13曲目〜17曲目)
ここからはひたすら踊りゾーン。自由に私がいま「踊れる」と思ってるBPM130前後のアニソン・ゲーソンをガンガン投入しました。
13. よりみちサンセット(Yurizo Garage Edit Short Ver) / 放課後クライマックスガールズ
14. リトルリドル (M@STER VERSION) / 双葉杏 (CV: 五十嵐裕美), 城ヶ崎莉嘉 (CV: 山本希望), 二宮飛鳥 (CV: 青木志貴), 白坂小梅 (CV: 桜咲千依) & 早坂美玲 (CV: 朝井彩加)
15. Let Me Be With You (feat. Nino) / ROUND TABLE
16. Snow in “I love you” / 777☆SISTERS
京都のオールジャンルパーティ「Layered」をオーガナイズする百合蔵さんによる『よりみちサンセット』のリミックスから『リトルリドル』で底抜けに明るいバイブスをお届けしつつ、「ちょびっツ」の『Let Me Be With You』で懐かしさとホッコリ感をプラス(この曲もうちの奥さま選曲)。つづいてナナシスも守備範囲に入れている友人Pから教えてもらってから気に入っている、777☆SISTERSの『Snow in "I love you"』。ちょっと季節はずれかなと思っていたけど、当日東京は雪だったようで結果バッチリでした(笑)。
17. Special Monday (For Blue Weekenders Remix)
そしてISHIIさんに教えていただいたお気に入りの一曲、冨永みーなさんの『Special Monday※』のリミックス。まさに声優レアグルーヴ、と言える一曲を声優レアグルーヴクルーであるcoffee_and_tvさんがリミックスした珠玉の一作です。
※オリジナル曲の初出はCD「われら混線合唱団~華も実もある恵日寿高歌謡祭」
第五ブロック(18曲目〜19曲目)
18. ミラーボール・ラブ (Musicarus Remix) / 宮本フレデリカ (高野麻美), 棟方愛海 (藤本彩花), 及川雫 (のぐちゆり), 荒木比奈 (田辺留依), 姫川友紀 (杜野まこ)
19. 躍るFLAGSHIP / 小日向美穂 (津田美波), 佐藤心 (花守ゆみり), 北条加蓮 (渕上舞)
ラストは先日発売されたばかりのデレマスCD『THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 3chord for the Dance!』から2曲、昨年11月のナゴヤドーム公演で、すっかりアンセムの仲間入りを果たしたTAKU INOUEさんの『ミラーボール・ラブ』とミフメイさん作曲の『踊るFLAGSHIP』。『ミラーボール・ラブ』の方は私達ハウスDJには(そしてもちろんアニクラDJにも)おなじみ、トラックメイカーMusicarusさんによる間違いなしの鉄板ハウス・リミックスです。
もうこのあたりになるといつもやっている四つ打ちのノリでガンガンいけるので楽しむだけという感じ。曲そのものが強いのでコメント欄の反応も多く、配信ならではの楽しさを満喫していました。
ラスト一曲…
以上19曲で終わるはずだったんですけど…アニクライベントだし、私のお気に入りだしと軽い気持ちで着てしまったこちらのTシャツが私に雑念を起こさせたわけですね…
伏線回収#ヒトリアニ pic.twitter.com/pBkjUb6dnD
— おが (@motipon0720) 2020年3月29日
20. 新世界交響楽 / さよならポニーテール
いや、そりゃ見てる人は期待しますよね、キルラキル。それも『シリウス』か『ambiguous』。でも先述したとおり、BPM120〜160あたりでやっているとここいらの曲はちょっと入らないな…と考えてたら、あったじゃないか、さよならポニーテールのEDが! ということで予定より早く『FLAGSHIP』を切り上げて1番だけなら入るはず…と急遽挿入、伏線回収させていただきました。ただ結果1分あまりおしてしまった上になんか尻切れトンボな終わり方に…これは本当にあるまじきことです、私の後を担当されたNadesicoreさん、誠に申し訳ありませんでした…
はい、振り返りとしては以上です。あとは自慢とポエムとお願い事です。
結果
そんな反省に終わった初めての人前でのアニクラDJプレイでしたが、全体としては多くの方に割と楽しんでいただけたのではないかなと思っています。
そしてこちら。
Fukazawaさんの選曲が刺さりまくるタイプの人 #ヒトリアニ
— 烏屋茶房/カラスヤサボウ (@tghgworks_krsy) 2020年3月29日
終わった直後目に入ったありがたいお言葉に卒倒するかと思った。冒頭の話につながりますけれども、チャンスがあると思ったらなんでもやってみるものであります。カラスヤさん、身に余るお褒めの言葉、ありがとうございました。
最後に:Re:animation 14へのご支援をお願いします〜2020年4月いっぱいまでクラファンやっています
私はもともとこのRe:animation(以下リアニ)に縁があった人ではなく、単にデレマスとアニメが好きなだけの趣味DJでして、たまたまヒゲ氏のお声がけを見たからこういうところでDJができただけです。
調べてみればすぐ分かる通り、このイベントは長い歴史の中でたくさんの方が関わり、貢献して、今のような大きなものになってきたものです。ヒトリアニはあくまでリアニ主催のイベントではなく、ヒゲ氏個人の発案による勝手イベントではありますが、確実にリアニの文脈の中にあるものです。その中に横入りしてしまう形になってしまっていいのだろうかということが、当日を迎えるまで気がかりなことでした。
とにかく自分としては、仲間に入れてくださったヒゲドライバーさんに恥をかかせないように、リアニを愛する皆さまに恥ずかしくないプレイをやろうと思って臨んだ本番でしたので、とりあえず多くの方に楽しんでいただけたようなのには、本当にホッとしました。
それと同時に、いま無期限の延期を決定し再起を図っているリアニにできる限りの貢献をして、今回のような貴重な機会をいただいたお礼としたいと思っています。とりあえずは個人として現在おこなわれているクラファンにいくらかの寄付をさせていただきました。
この記事を書いている現在50万円近くのお金が集まっていますが、イベント規模を考えれば、おそらくまったく足りないことと思います。ましてやリターン品の原価がここから引かれると思えば、Re:animation 14の再起のためにはもっとたくさんのご支援が必要です。
よろしければ、ぜひぜひこちらのクラウドファウンディングに少額からでもご協力をいただければ幸いです。
いつかCOVID-19の脅威が去り、リアニの再起が決まれば、私はお礼かたがた現地に伺いたいと思っていますし、もしもヒトリアニで一緒にやったDJさんたちが一同に会することができたらステキなことだなあと考えております。
以上、お願いごととポエムでした。
2年ぶりのハウスMixをきっかけにアラフォーの自分を振り返ってみた
もうちょっとちゃんと書きたいと思いながらも、時間もあまりなく日記程度の内容なのだけど。
2015年から細々とDJ Mix(※)をつくってMixcloudというサービスに公開している。おもに私がDJをするときに取り扱うのはハウスというダンスミュージックのジャンルなのだが、そのハウスのMixには「Metaphysical Lounge(形而上学的ラウンジ)」という大仰なシリーズ名を冠してこれまでに9つのMixを公開してきた。また同名のリアルなパーティもこれまで二回やってきた。
もともとはラウンジ気分で聞き流せるようなBGM向けのハウスMixというテーマでやってきた(ゆえにディープハウスが多かった)のだけど、今はあまりそこの縛りは気にせず、そのときどきに気に入っているハウスをつなげて公開している。
で、そのMetaphysical Loungeのvol.09を9月24日に公開した。
このシリーズ、vol.08をリリースしたのは2017年9月ということで、2年ぶりの更新ということになる。2015年から2017年までの2年間で8つもハウスのMixが公開できたのに、その後の2年間になにがあったのかと考え直してみると。
2016年にやりはじめたデレステや長男の影響でハウスでなくポップスのDJに興味がわいていたというのはあるだろうと思う。実際にMetaphysical Loungeを更新するまでの間に息子のために作ったポップスのMixがMixcloudに上げられている。公開しているのはこれだけだが、非公開でウチの自動車の中でだけかかるものが3つあったりもする。
あとは2016年に入ってからリアルなDJのいるパーティにちょこちょこ顔を出すようになったことも大きい。結婚して子どもが生まれたから10年ばかり音楽の現場から遠ざかっていた自分にとって、ひっそり家や自分の店でDJをやるというのはダンスミュージックと関わることそのものだったわけで、そこらへんの魂が人様のパーティにいくことでいくらか浄化されてしまったのも大きい気がする。
ただ2年、それほど頻度は高くなくても人のイベントに顔を出させてもらっていると、今度は自分でもなにかをやりたい、まずは猿真似でもいいから自分でやったことを増やしたいという欲求が湧いてきて、これまで二回のリアルなパーティを開いてみたり、ようやくまたハウスのMixを取ろうという気持ちがわいてきたりしたのが今だった、というわけである。
今後のことはまだまだ考えられていないし、やはりクラブで出会う知り合いたちのように頻繁に現場に顔を出すのは難しいけれど、40になってまたこういう世界に顔を出したりできることがとても嬉しい。30代は独立したり、コワーキングスペースを育てたり、そして小さな子どもを不慣れながらも夫婦で育てたり、そんなことが重なってなかなかそういったことができなかったので。
人の輪に出てみると結構うれしいお誘いもあるもので、40代、今から楽しくなりそうだなと思ってるところである。
※複数の楽曲をMixしてなんらかの作品に仕立てたもの。多くの場合は複数楽曲を任意の位置でつなげてメドレーにしたものであることが多い。
1ヶ月半筋トレを続けた経過と結果
5月に「体重調整期間に入ります」というエントリを書いたが、それから筋トレ・食事に関する気配りといった努力は続いているのか、ここらでご報告しておく。
食事はわりと気をつけている
今、私はたまにしか昼食を摂らない。私が運営しているコワーキングスペースの中で週に2日ほど、メンバーが集まって妻がつくった味噌汁とごはんを食べる日があるので、そこではごはん軽く一膳とお味噌汁をいただくが、その他の日はだいたいサラダチキンと野菜ジュースである(たまにしっかり食べたくなったらファミチキ乗せたりすることもあるけど)。これでわりと満足感が得られ、夕食まで問題なく過ごせる。
あと忙しいときはまったく食べない。さすがに夕方ごろになるとお腹がすくが、我慢できないほどではない。
お昼を減らしてなにがいいって、昼下がりに眠くならないところ。お昼に外食したりするとてきめんに眠たくなって、14時〜15時ごろは寝てるんだか働いてるんだかよくわからない状態になりがちだけど、お昼を減らした日はパフォーマンスが保ちやすい。
サボっていたらすぐ来た腰痛
筋トレ宣言をしたのが5月24日、そしてサボりだしたのは多分6月中旬ごろのこと。ちょうど疲れがたまって腰に違和感を感じていたからなのかもしれない。
ベッドが悪いのか起きたら腰がすごく気持ち悪い。痛い、というほどではないが違和感がある
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) June 17, 2019
それから異変があったのは1ヶ月ちょっと後、7月28日に掃除機をかけているときだった。少し身体をひねったときに感じたいやな違和感。即座に強烈な痛みがあったわけではないが、じわじわと痛みが強くなってくる。やってしまった。
前回腰を痛めたのが半年ほど前、明らかに頻度が上がってきている。これはやばい…
ダンベルと出会って筋トレを再開
それから二日、腰の痛みに苦しみながら筋トレをサボっていたことを後悔しながら読んだのがこのブログ記事だった。
たびたびTwitterでタイトルは見ていたが『ダンベル何キロ持てる?』はなんかすごそうだ。さっそくdアニメストアですでに配信されていた3話分をイッキ見した。
じつにいい。身体を動かしたい。腰が痛いという鬱憤もあって、とても身体を動かしてみたくなる気持ちになった。
おおよそ3日後、腰の痛みが軽くなってきたところで筋トレを再開し、現在までの約1ヶ月半ほど順調に続いている。
なぜ続いているのか
1. 筋トレするタイミングを固定した
習慣化するにはまず実施するタイミングを固定することだと誰かが言っていたので、汗を流す直前の、お風呂前に固定した。飲み会後でも体調が悪くなければ多少メニューを減らしてでも実施する。なお、身体的に疲れたなと感じたら1日休息はとるようにしている。あと旅行時は
妻には不審な目で見られるが、長男が最近いっしょにやってくれるようになった。二人並んでプランクをしているとより不審な目で見られるようになったが…
2. (少しだけど)お金をかけた
大した額ではないが、プロテインを豆乳に溶かして運動後に必ず飲む。最初はソイ(大豆)プロテインを飲んでいたが、最近はホエイプロテインの方が効率がいいということで切り替えたところ。
ザバスのホエイプロテイン練乳感あって美味いので奥さんに勧めたら「これ溶けたソフトクリームやん」と一蹴されてしまった
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) 2019年9月10日
少額でもお金をかけているのといないのとでは、モチベーションが大きく変わる。プロテインだとおおよそ約50食分で4500円ほど。私の場合1日に1回飲むので1日100円弱の課金額ということで、ほどよいコストだと思う。
ダンベルなどの器具を買うのもいいだろうけど、まあこれは近くのジムに通ったほうがよさそうかなと思う。
どんなメニューをこなしているのか
通常、毎日以下のメニューをこなしている。
8月の間はプッシュアップ1セットこなすので精一杯、というか7回くらいで休憩をはさまないと腕が上がらない感じだったが、9月に入ってしばらくしたあたりから急に進歩があり、1セットどころか急に2セットできるようになっていた。
最近は筋肉の成長にしたがってメニューの回数は増える傾向にあり、時間が最初よりかかりがちになっているのが少し悩ましいところ。
一ヶ月半筋トレを続けた結果
体つきは変わった
写真が取れていないので比較のしようがないが、たしかに胸筋と大腿筋は少し大きくなった。腹筋についてはおそらく増えたのだとは思うが、脂肪を減らすような運動をしていないので結局おなかまわりのプヨプヨに隠れてよく見えない。
残念ながら体重・体脂肪率には変化なし
見た目には変わったし、またワークをこなせる回数はあがっているだが、今のところ体重と体脂肪率には目立った変化がない。計測は筋トレ直後、つまり夕食とプロテインが入っている状態なので朝に比べて高く出る傾向があるのだけど、まだまだ目標の体脂肪率にはほど遠い。結局脂肪を燃やさないといけないわけで、そろそろここらへんで有酸素運動を取り入れていかないといけないのかなと思っている。
少なくとも筋肉を大きくすると体重はむしろ増加するというし、あまり体重にはこだわらずにじっくりやっていこうと思っている。
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はじめてライブ遠征というやつをやっていろいろ失敗したので反省を書き連ねておく
初めての遠征でやらかした失敗を全部書く
去る9月4日、幕張メッセで行われた「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 7thLIVE TOUR Special 3chord♪ Comical Pops!」の2日目に現地参加してきた。とても長い名前だが、ようするに私がよくやっているゲーム「アイドルマスターシンデレラガールズ」のライブである。同作に出演する声優さんが集まり、作中に登場する歌を歌って踊る。
現場ですね pic.twitter.com/TMDjkuGGAT
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) 2019年9月4日
ライブはTwitterで喚き散らしたとおり最高だったわけだが、初めての遠征にあたってやってしまいそうな失敗をたくさんしてしまったので、ここに共有しておきたい。
1. 物販は必ず事前販売でゲットしておく
うげえ高いなーと思っていても、当日になったらなにか一つは欲しくなるのがライブの物販なのである。デレマスのライブであれば、必ずアソビストアで期間限定のグッズ事前通販をやっているわけで、そこで買っておけば間違いがなかった。
チケットが取れた時点ではもちろん買えたわけだ。だが、その値段の高さにウッとひるんでしまい「これはなにを買うか厳選してからカートに放り込まないと…」とブラウザを閉じてしまったまま、つい忘れてしまっていた。
8月に入ってから「ヤバいさすがにコンサートライト(サイリウム)くらいは買っておかないと」とログインしても時すでに遅し、事前販売期間はすでに終了してしまっていたのだ。
こうなるとライブ当日に長蛇の列に入って買い求める必要がある。早めに行かねばと思いつつ、当日朝にひと仕事してから大阪を発ち、幕張に着いたのは14時。開演の4時間前である。急いで物販コーナーに駆けつけたが、特に行列はできていない。
あれ? おかしいなと思いブースまで行ってみると、もうほとんどの商品が売り切れている。最低限ほしいと思っていたコンサートライトが全滅、推しのグッズも全滅(後で調べてみたら高額で転売に出されてた、許すまじ。絶対ああいうとこからは買わん)。
仕方なく公式パンフと、かろうじて残っていたタオルだけいただいてすごすごと閑散とした物販ブースを後にしたのだった。
事前販売をうっかり逃したサイリウム、現地でも売り切れてた不覚。つらい
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) 2019年9月4日
なお実際にライブに参加してみて、コンサートライトはやはり必須。先行販売のA列席ということで熱心なPさんたちが揃っていたのは間違いないが、見渡す限り誰も手ぶらで応援している人はいない。
ライブが盛り上がってきて後半戦にもなってくると自分の中でもなにかがふっきれてエア光る棒よろしく手を振って、いい気持ちになって楽しんでいたが、やはりあれがあってこそ世界にエントリーしやすい感じがする。公式じゃないものを使っている人もたくさんいたので、これは確実に用意すべきであった。
2. 荷物を預ける段取りをしていなかった
その日の宿は東京。新幹線で東京に着いたが、チェックイン時刻がまだだったのと(考えてみればチェックイン前でも大抵のホテルは荷物くらいは預かってくれるはずなのである)、物販ブースに早く行かねばとの焦りもあって、荷物を宿に預けずそのまま千葉行きの電車に飛び乗った。
海浜幕張駅のあたりのコインロッカーを探してみるが、どこもいっぱいである。先述した物販に行き、開場までの残り2時間弱を近隣施設のロッカー探しに費やした。空いてるところもあるが、20時や21時で閉めてしまうロッカーばかりである。開演が18時なので21時までは3時間、ちょっと余裕がない。
2時間近く、重い荷物を転がしながら海浜幕張のあたりをウロウロする羽目に。ライブに参加すると思われる人々は軽装で散歩や交流を楽しんでいる。うらやましい。
あかん…ロッカーがない…あっても21時までに閉まってしまうところばかり
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) 2019年9月4日
ほとんどロッカー探しだけで2時間費やした…かなしい…
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) 2019年9月4日
結局ロッカーは見つからず、もう会場に持ち込むしかないと幕張メッセに帰ってきたのは開場時刻の16時30分すぎ。そこでようやく気づいた、会場の中にコインロッカーがあることに。とはいえ会場のロッカーである。どうせいっぱいなんだろうなと思って入ってみると…
スカスカである。
大きいロッカーが余裕で空いている。いくつも空いてる。まさに灯台下暗し、やっとの思いで荷物をロッカーに入れ、ほっと一息がつけた。
プロデューサーやファンからのフラワースタンドすごい数です pic.twitter.com/10IZlL9p0n
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) 2019年9月4日
そこでようやく自分が参加したフラワースタンドを見たり、周りのプロデューサーさんと軽く挨拶したりということができた。少しでも刷った名刺をお渡しできる機会があってよかった(アイマスのライブではプロデューサー = ファン同士が名刺を交換しあう文化がある)。とはいえ100枚刷った名刺のうち、お渡しできたのは10枚程度という体たらくになってしまったわけだけれど。
しかしもう開演1時間前。ほっとしたのもつかの間、すぐに会場に入ることになった。結局東京でのちょっとの手間と時間を惜しんだせいでとんでもない苦労を背負うことになってしまったわけだ。
ちなみに会場の椅子は小さく、大きなカバンは持ち込まなくて大正解…というかこれでカバンを預けられずにいたらどうなっていたかと思うとゾッとする。
3. まさかの4時間ステージ。終演後には予定を入れないほうがいい
ライブってどんなに長くても3時間くらいだよね、と思っていたらなんとアンコールも含めてちょうど4時間の超長丁場だった。
おバカなことに東京で友人と、21時30分、遅くても22時くらいには会う約束をしてしまっていた。時間を忘れてライブを楽しみ「結構長かったなー3時間くらいはあっただろうか」と思い携帯電話を確認して青ざめた。もう約束の時間を超えて22時である。よ、4時間もあったのか…すぐに友人にメッセージでお詫びをして東京に大急ぎで戻った。
だが、何万人もの人が来ているライブの終演後、スムーズに帰れるわけはない。海浜幕張駅はパンク寸前、むりやり乗った超満員電車に揺られて帰ってきた。幸い友人には東京駅で会えて直接お詫びをすることができたけど、ホント終演時刻はちゃんと調べておいたほうがいい。ていうか後に予定を詰めるべきではない。
ま、まさかの4時間…おなかいっぱいです…
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) 2019年9月4日
失敗を乗り越えて、次はもっと楽しいライブの日にしたい
ということで初めての遠征、クッタクタのボロボロになるくらい失敗したのだけど、ライブそのものはもう本当に最高としかいいようがなく、自分の中のデレマス愛がかつてないレベルで花開いてしまった。
心を幕張に置いていったまま大阪に帰っている
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) 2019年9月6日
凪役・立花さんが舞台上で泣いてしまったときにしぶりん役・福原さんがさりげなくタオルを差し出したの最高だったし、その後タオルを元の位置に戻してぺこりぺこりとお辞儀をする立花さん、いいよと手を上げて応える福原さん、どっちも地球上でもっとも尊い部類の生命体であった
— Fukazawa Kojiro (@witch_doktor) 2019年9月6日
家族やお財布との相談は欠かせないが、今後もライブビューイングなどなど、いろいろなやり方で参加していきたい所存です。今日は以上です。
書評『正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について』
先月、私が運営しているJUSO Coworkingにギルドワークス株式会社代表・市谷聡啓さんから新著『正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について』をご恵投いただき、夏休みの間に読ませていただいた。その感想をここに共有したい。
なお、この文章を読んでいる方に先に知っておいていただきたいことがあるので書いておく。
- 筆者は著者・市谷氏が代表を務めるギルドワークス株式会社の取引先である。
- 先に書いたとおり、筆者はこの本を賜ったのであって、購入したわけではない。
- 筆者はギルドワークス株式会社との仕事を通じて、デザイナーとしてアジャイル開発の現場を経験したことはあるが、決して数多くの事例を経てきたわけではない。
以上ご留意の上、読み進めていただきたい。
本書の概要
本書は、数多くの現場でアジャイル開発を実践し、コミュニティ活動や講演活動を通じて思索を繰り返してきた著者による、アジャイル開発プロセスの解説書である。
氏の前著『カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで(新井剛氏との共著)』では、とある開発者を主人公に据えた物語を通じてアジャイル開発の導入と実践を入門者にも分かりやすく示した。
今回はより体系的にアジャイル開発とその実践についての知識・プラクティス・そしてバックボーンとなる考え方についてまとめてある。『カイゼン・ジャーニー』のおもな想定読者であるアジャイル入門者でなく、一度アジャイル開発を導入・実践しようとしてうまくいかなかった経験をもつ人や、その入口で足踏みしてしまっているような人に向いているように思えた。
失敗の体験・ぶち当たった壁に基づいた構成
著者の提唱する「仮説検証型アジャイル開発」は
- 価値探索のループ
- MVPの特定
- アジャイル開発のループ
- できあがったプロダクトの検証から、再び価値探索へ
以上のプロセスを繰り返すものである。時系列に沿って解説するならば上記の順番で論を構成すればよいのだろうが、本書ではそうした構成は取っていない。これは著者の「失敗とつまづきの経験」を辿るための構成だからだ。
本書でも述べられている通り、アジャイル開発というのは定型化されたメソッドではない。その実践のための様々なやり方(とくに本書ではスクラムが多く取り扱われている)も、決して手順通りにやればうまくいく、といった「術」ではない。
だから、本書で紹介されるひとつひとつのプラクティスには「それをおこなうことにした背景」がセットになっている。そして、その背景の多くは困難であり失敗体験である。立ちはだかる壁を手探りで乗り越え、また次の壁に当たる…その筋立てを追っていくうちに、著者がたどり着いたひとつのアジャイル実践のカタチが浮かび上がる。本書はそうした構成を取っている。
「正しいもの(正解)は存在しない」からスタートする「正しいものづくり」への旅
本書のタイトルとなっている「正しいものを正しくつくる」という言葉は、著者が代表を務めるギルドワークス株式会社のスローガンでもある。
「正しい」という言葉は危険物である。プロダクトづくりに関わったことがある人であれば「プロダクトづくりに正解なし」は多くの人が実感するところであるし、だから「これが正しい」と言い切ることはともすれば非難の対象になりやすい。
「絶対的な正しさがあるので、それを見つけ出そう」ということではもちろんない。
上のように、もちろん著者もイントロダクションから「プロダクトづくりには正解がない」ことを明示している。しかしその後に続く一節が印象深い。
この言葉(筆者注:正しいものを正しくつくる)に価値が生まれるのは問いにしたときだ。「正しいものを正しくつくれているか?」
正解がない世界では、自分たちがやっていること、向かっている方向が、誤っていないか問い続けるしかない。状況を漸次的に進めることから学びを得て、それに適応し、また漸進する。これが不確実性の高いプロダクトづくりで求められることだ。
絶対的に正しいものはない。でも、だからこそ、不確実性に支配された暗闇を進むには「正しいものを正しくつくろう」という理想、そういった松明のようなものが必要だ。そしてそれは一緒に仕事をする人たちと分かちあい、守っていかなければいけないものだ。これは私たちデザイナーにとっても同じことである。
本書には不確実性の海をわたる人を照らす、理想という灯り(ふけば飛ぶような心細い灯りである)をより強いものにするための実践例・思考の例が数多く紹介されている。ソフトウェアをはじめとするデジタルプロダクトが話の対象ではあるが、ここで紹介されている考え方のいくつかは、デザイナーはもちろんのこと、さまざまなプロダクトづくりに関わる人々にとっても参考になるのでは思う。
「アジャイル、概要は知っているよ」「やってみたけどなんだかイマイチだった」そんなエンジニア諸兄はもちろんのこと、もっといいデザインプロセスを求めている、そんなデザイナーにも手にとっていただきたい、そんな一冊であった。
正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について
- 作者: 市谷聡啓
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2019/06/14
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
セミの亡骸を持って帰って捨てた話
僕は家族が管理しているマンションに住んでいる。そのマンションのエントランスにセミが落ちてた。
とっさに見なかったことにしてそのまま通り過ぎようかと思ったけれど、掃除をするのは家族の誰かである。これは見逃すわけにもいくまい。おそるおそる、足元のブツに手を伸ばす。
虫や、その死骸にふれること自体はどうというものでもないが、セミは別だ。奴らは死んだようでいながら急に壊れた玩具のように動き出す。僕は雰囲気ホラーは好きだが、ただただビックリさせるだけのホラーは大嫌いなのだ。
指でちょん、と突いてみると「ジジッ」と微かに聞こえたような気がしたが気のせいだった。よし。動いていない。よかった。
ちょんと哀れな亡骸を拾い上げ、それからはたと困ってしまった。どこに捨てよう。
なにしろ自宅である。近所の目もあるし、目の前の道路の真ん中に放るわけにもいくまい。土があるところがよさそうだ。うん、土に帰そう。
そう思い目を走らせると、マンションのエントランス外側の植木が目についた。植木の下は確かに土になっているが、そこに捨ててしまっては結局家族の誰かの手をわずらわせることになってしまい、解決にならない。
ゴミを入れるポストだろうか。いやいや、ゴミポストにセミの死骸を入れたところで業者さんが回収してくれるわけでもないし、他の住人にも迷惑すぎる。
向かいの家のちょっと広めの植え込みが一番アリに分解してもらうにはよいロケーションのように思えたが、もちろんそんなことはできるわけがない。
もう家の脇の小さな排水溝に隠してしまうか。いやいや、いずれ自然に帰るとはいえ、落ち葉がたまれば詰まるのが排水口である。そんなナマモノを捨てるわけにはいかない。
どこにもない。街にはセミが土に帰れる、その土がない。
思えば奈良の田舎にはセミが落ちていれば適当に放り投げられそうなところがたくさんあった。田んぼやあぜ道、小さなものじゃ絶対つまらないくらい大きな用水路(これはこれで危ないんだけど)、そして小川。もちろんそんな懐の深いところは周りをいくら見渡してもなかった。
僕は意を決して自分の家のポストを開け、昼に放り込まれたであろう不動産屋のチラシを取り出すと丸めてセミを包んで家に帰り、キッチンのゴミ箱に彼を隠し、合掌してフタを閉めた。
妻は20分後に帰ってきた。彼女はゴミ箱の中にひとつの命を宿していたものがひっそりと眠っていることを知らない。それは木曜日に、誰にも知られることなく、そのまま袋ごと運ばれていき、どこかで灰も残らないほどの炎で焼かれ、天に帰る。それでいい。
晩ごはんを食べながら、僕はもう一度妻の背後でひっそりと眠るそれに、心のなかで手を合わせた。
『トリニティセブン』オンリーでMixつくりました
久しぶりにミックスを上げたのでご報告。
2014年のTVアニメ・近年では劇場版シリーズが公開されている『トリニティセブン』のサウンドトラック・リミックス盤から全22曲(同一曲の複数バージョンを含む)を1時間のミックスにした(下記ウィジェットから直接聴けます)。
前回の記事で『トリニティセブン』のサントラについて取り上げたのだが、その際に知人から2015年に発売されたTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDによるリミックス・アルバムのことを教えてもらった。これが見事にフロア仕様の強めのリミックスで、早速繰り返し聴かせてもらっている。
TRINITY SEVEN FULL ALBUM 「MAGUS MUSIC LIBRARY」
- アーティスト: ヴァリアス・アーティスト
- 出版社/メーカー: avex pictures
- 発売日: 2017/09/27
- メディア: MP3 ダウンロード
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trinity heaven7 : MAGUS MUSIC REMIXES TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- アーティスト: TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- 出版社/メーカー: avex pictures
- 発売日: 2015/03/25
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
熱が冷めやらぬうちに、ということで前回紹介した『TRINITY SEVEN FULL ALBUM 「MAGUS MUSIC LIBRARY」』と今回勧めてもらった『trinity heaven7 : MAGUS MUSIC REMIXES』のミックスを一発録りで公開した次第。
基本的にテクノのミックスとして制作したのでボーカルものはかなり少なめだが、クラシックなテクノ風の要素と現代的なエレクトロニック・ミュージックとしての要素、そして劇伴としてのストーリー性を兼ね備えたトリニティセブンの音楽の魅力を感じてもらえるミックスになったのではないかと思っている。
セットリスト
- TRINITY SEVEN MAIN THEME / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- Ordinary School Road / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- PALADIN / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- Fickle Butterfly / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- MAGUS MODE / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- memories archive / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- MAGUS MODE "SATAN FORM MIX" / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- Chrono Calculation / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- MAGUS MODE(TRINITY FORM) / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- IMPER (LOST) / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- Alea iacta est!(endless game) / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- LAST CREST(miserere nobis) / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- TURN THE TABLES / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- AMAZING MAGUS / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- SHaVaDaVa in AMAZING♪(OUT OF LOGIC) / ユイレヴィ♡風間レヴィ(CV.佐倉綾音)&倉田ユイ(CV.村川梨衣)
- MISCHIEF!(MORE CUTE) / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- TURN THE TABLES(ON THE FLOOR) / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- Close Call / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- Spell Succeed(access circuit) / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- CHASE ACCELERATE / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
- BEAUTIFUL≒SENTENCE / 内田 彩 & 原 由実
- Nervous Sightseeing(IT'S A BEAUTIFUL WORLD) / TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND