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プロデューサーさん以外の人にも薦めたい、デレステ配信楽曲10選(追記して11選になった)

アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ(通称デレステ)」は2015年に配信開始されたモバイル用音楽ゲームである。詳しい説明はWikipediaに譲るとして、僕は2016年4月から、中断している期間はあれどおおよそ3年、このコンテンツに触れてきた。

デレステでは2019年5月21日現在、全199曲もの膨大な量の楽曲がプレイ音楽として配信されている(ソースは下記ウェブページ)。そのすべては無料でプレイすることができ、またそのほとんどは現在iTunes StoreGoogle Play Musicにて購入が可能となっている(2018年9月ごろまではほぼ配信されていなかったことを考えると大変恵まれた環境になった)。

【デレステ】楽曲一覧 - Gamerch

今回はデレステのいちプロデューサー(作中ではプレイヤーのことを登場するアイドルたちのプロデューサーに見立てて「プロデューサー」または「P」と呼ぶ)として、その楽曲の魅力をプレゼンしたく、10曲を選んで解説していこうと思う。

セレクトにあたって気をつけたのは、できるだけゲームや登場するキャラクターのこと、ストーリーのことを知らない方でも聴きやすい曲、そしてアニソンや声優による歌唱に馴染みがない人でも聴きやすいものを選んだことである。なので、必ずしも「僕が好きな曲ベスト10」という性質のものではないことはご承知いただきたい(とはいえ大半は大好きな曲なんだけれども)。

基本的に僕は文章を書くときに公知の人であっても敬称をつけることが多いのだが、このレビュー文中では、歌唱する声優さんやコンポーザーさん、その他の人名に関して敬称を略している。

では全10曲、お付き合いいただきたい。公式が配信している試聴用のYouTube(公式のものが見つからなかった曲もいくつかあるが)に各曲リンクしているので、聴きながら読んでいただけると幸いである。

1. 無重力シャトル

相葉夕美 (CV: 木村珠莉)、安部菜々 (CV: 三宅麻理恵)、城ヶ崎莉嘉 (CV: 山本希望)、多田李衣菜 (CV: 青木瑠璃子)、新田美波 (CV: 洲崎 綾)

無重力シャトルジャケット画像

最近話題の楽曲から。ゆずの北川悠仁による書き下ろし楽曲。

2018年の下半期からデレステではゆずのカバー楽曲が多数配信されており、本人のテレビCMへの出演など蜜月ぶりが伺えたが、ついに彼らの書き下ろし楽曲が平成から令和をつなぐ大型連休を狙って投下されることになったという流れである。

僕は昔からゆずに苦手意識があった。『夏色』で彼らが世に躍り出たのは1998年、僕が大学生になったころだった。当時音楽の好みをこじらせた青年だった僕には彼らが放つどストレートな熱と光はなんとなく居心地が悪く感じられるものだったのだ。

なのに。今こうしてアイドルたちが歌い、玉屋2060%がシンセアレンジしたものを聴くとあら不思議、とても気持ちいいポップスだ。それでありながら、サビのメロディといい《何千億光年も はたまた太陽系から はぐれちゃっても》と早口でつむぐCメロといい、まぎれもなく「ゆずらしい(僕でも知っている程度のゆずらしさ、ではあるが)」ポップスでもある。

いかに僕がつまらないバイアスをかけて音楽を受け止めているかがよく分かった貴重な経験だった。すみませんでした。

おんなの道は星の道

村上巴(CV: 花井美春)

おんなの道は星の道 ジャケット画像

こちらもネット記事で話題になった楽曲。なんと作曲は「天城越え」も手がけた演歌界の大御所、弦哲也。作詞・編曲も演歌界の重鎮と言うべき人選となっており、ここはさすがは日本コロムビア(レコード会社としてアイドルマスターシリーズの音楽面を担当している)といったところ。デレマス曲には他に演歌風の曲はいくつかあるが、この曲はもう入り一発目の音からしてマジモン感がすごく、ひっくり返ってしまった。演歌のギターで挟まれる三連符ってああ、演歌だなあという感じでなんだかホッとしてしまうよね。

対して歌うは村上巴役、声優の花井美春。民謡の経験をお持ちとのことでこちらも見事な歌いっぷりである。

この曲の誕生秘話など詳しいところはぜひ、ねとらぼさんの記事をご覧いただきたい。

nlab.itmedia.co.jp

ガールズ・イン・ザ・フロンティア

渋谷凛(CV:福原綾香)、早坂美玲(CV:朝井彩加)、木村夏樹(CV:安野希世乃)、小日向美穂(CV:津田美波)、塩見周子(CV:ルゥ ティン)

ガールズ・イン・ザ・フロンティア ジャケット画像

デレステ3周年記念曲。シンデレラガールズ楽曲の多くの歌詞に通底して流れるモチーフはまさに「シンデレラ」なのだが、実に様々なシンデレラ像を曲ごとに、手を変え品を変え示してくれるのも楽しみ方のひとつである。

過去に歌われたシンデレラモチーフ楽曲はシンデレラを見初める「王子様」としてのプロデューサー = プレイヤーの存在を前提にしたものが多かった。2015年に放送されたテレビアニメシリーズ『アイドルマスター シンデレラガールズ』主題歌となった『Star!!』のこの歌詞が典型的である。

《慣れないこのピンヒール 10cmの背伸びを 誰か魔法で変えてください ガラスの靴に》

対してこの曲のシンデレラは

《誰かみたくなろうとして 誰かのあと追いかけてみても 王子様は 待ってないし ガラスの靴は イミテーション》《夢は他人に託すな》

と強く言い放つ。こうした自立した女性の強さを感じさせる歌詞はAKB48の『River』・欅坂46の『サイレントマジョリティー』を引き合いに出すまでもなく、2010年代女性アイドルのひとつの典型だが、これをシンデレラガールズでやるのかと楽曲発表時には驚いたものだ。

力強いサビの中のもっとも耳に残る5音に「シンデレラ」の5文字を当て込んだところにこれまでのシンデレラモチーフ楽曲へのアンチテーゼと、新しいシンデレラガール像を描き出す矜持が感じられる、外側も内側も凛々しい一曲である。

蛇足ではあるが、典型的な「王子様を待つタイプのシンデレラ」である小日向美穂(CV. 津田美波)をこの曲にキャスティングしたのはとてもアツいことだと僕は切に思う。

Angel Breeze

川島瑞樹(CV: 東山奈央

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昭和54年に生まれた僕にとって、アイドルの原風景を感じるのはこういった南の島に吹く涼しい風を思わせるような曲である。80年代末〜90年代頭はTV番組とのタイアップが盛んになりだした時期であり、日頃観ているアニメだろうとスポーツ番組だろうと、あまり脈絡なくアイドルの曲が流れ出して何度か面食らったものだ。けれどそれが僕と当時のポップスとの出会いのきっかけであった。

そう考えれば、アニメ『不思議の海のナディア』のイメージソングになっていた早見優の『マーメイドメモリー』あたりがこの曲のイメージに近い。

ふしぎの海のナディア マーメイドメモリー - ニコニコ動画

実はこのレビューを書くまであまり歌詞には注目してなかったけれど、出だしから

《ねぇ あなたがくれた 白い帽子 南風が飛ばした もういらない やっと気づいた 髪なびかせ 小さくなるの見てた》

なんと別離の歌だった。知らなかった。

イリュージョニスタ!

本田未央(CV:原紗友里)、佐久間まゆ(CV:牧野由依)、鷺沢文香(CV:M・A・O)、輿水幸子(CV:竹達彩奈)、新田美波(CV:洲崎綾)

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デレステ2周年記念曲。豪華絢爛な雰囲気あふれるスイング・ジャズ風ポップス。

歌い出しの原紗友里の陽性のボーカルがアレンジにぴったり寄り添い、脇を固めるのが実力派の洲崎綾牧野由依、アクセントに竹達彩奈M・A・Oという布陣も素晴らしい。

《変わらなければ やがて朽ちてく 忘れ去られたメリーゴーランドね 泡沫の煌き make you happy! ほーら 手を変え 品を変え Get up! 明日のSUPER ST@R!》

華やかなアレンジと曲に潜んだ歌詞がいやにリアルなのである。ちょうどソシャゲはパッケージのゲームと異なりサービスが終わると何も残らない残酷さがあるという話題がネットを賑わしていた頃だったか。

 まああまりそういう難しいことは考えずに頭を空っぽにして聴くと多幸感が味わえる。

《ワンナイト・イリュージョン 爛漫毎日 良い夢見れば いい朝も来る》

そういうことです。 

Palette

島村卯月(CV:大橋彩香)、小日向美穂(CV:津田美波)、五十嵐響子(CV:種﨑敦美)

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昨年末に配信開始された比較的新しい曲。僕はそのころデレステを追いかけていなかったので、この春になってから初めて聴いたのだが、いきなり軽く趣味のいいピアノから爽やかなホーンセクションに展開するイントロに打ちのめされてしまった。

全体的にはピアノとホーン、スキャットが絡む、かわいらしくお洒落なポップスという印象だが、アクセントとしてチップチューンっぽいピコピコ音やひずんだパーカッションが各所に効いていて耳を退屈させない。

こういう、いわゆる渋谷系を想起させるポップスってもう僕のようなおじさんをホイホイするために、なんだかんだたくさん作られていて、もう勘弁しておくれよと思いながらも結局今日もリピートで聴いている。おじさんだから仕方がないのだ。

歌っているのはP.C.S(ピンクチェックスクール)。彼女たちの持ち歌は『ラブレター』以来の二曲目だが相変わらずのアップリフティングかつ甘々なユニゾンでおじさんの心を刈り取りにくる。リピートでかけながらつい口角が上がってしまう。

そう、おじさんだから仕方がないのだ。

Hotel Moonside

速水奏(CV:飯田友子)

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デレマス曲の中ではかなり珍しいEDM風の四つ打ち系楽曲。もちろんライブではおなじみのぶち上げポジション曲となっている。

イントロ〜Aメロの変態感高いうねるシンセと速水奏役・飯田友子の涼しいボーカルの対比が脳をかき乱し、BメロからサビにかけてはEDMらしいマッシブな音の連打が歌詞の世界と同じように、聴く者をお空の果てまで強制的に連れて行く。

昔紛れ込んだ音ゲー中心のクラブイベント(会場は銭湯だったけどね)でもDJさんがしっかりこれをかけててフロアの注目をかっさらっていたのをよく覚えてる。僕もいつか四つ打ちのイベントでかけるんだと思いつつ、まだその機会は来ていない。

Star!!

CINDERELLA PROJECT

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2015年放送のアニメシリーズ主題歌であり、スマホ音ゲーであるデレステの主題歌的ポジションの曲。おそらくデレステといえばこれ、くらいの曲なので、やっぱりプロデューサー以外の人に薦めたい曲として挙げるべきかは迷った。迷ったがこれはやはり、知らない人には一度聴いてもらいたい。

展開がジェットコースターばりによく動く。あまりコード理論は知らないのでおかしな説明になっているかもしれないが、入りのサビの後ズドンと入る圧倒的物量のストリングスの後ろでコードがズンズン下に落ち、イントロのギターでガッと解決されるあたりのスリリングな感じとか、Bメロで再びサビに向けて浮上する感じとか。あと落ちサビ(最後のサビの直前に入るボリュームを落としたサビ)のオーケストラル・ヒットの爽快感もすごい。

聴いてて汗が出るような曲だけど、メロディーの美しさも相まって聴き終わればサウナ後のように気分爽快になれるのでぜひ4分ガッツリ聴いてみてほしい。

STORY

島村卯月(CV:大橋彩香)、本田未央(CV:原紗友里)、渋谷凛(CV:福原綾香)、神谷奈緒(CV:松井恵理子)、北条加蓮(CV:渕上舞

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フルで聴いてみるとゲームで配信されているショートバージョンとは少し趣が異なり、『Star!!』や『M@GIC』といったアニメでおなじみの楽曲のメロディを引用しながらのギターソロや、アニメのストーリーを振り返るような歌詞とともに、エピローグ的な雰囲気をたたえた楽曲として構成されていることが分かる。

CDジャケットに描かれるのはアニメでnew generations(主人公格3人のユニット)が出会った桜の木の下のベンチ。歌うのはやはりアニメで大きな役割を果たすニュージェネ3人と Triad Primus からの2人。

このように結構ハイコンテキストな曲であり、この10選に上げるのもどうかなとは思ったのだが、そんな予備知識がなくても少しほろ苦い風味の爽やかな青春ソングとして十分楽しめる。

イントロの切ないピアノリフ、Bメロの鐘の音、サビのコーラスワークももちろんだが特にアコースティックに響くギターが全体を印象的なものにしている。もちろんアニメを観てから聴けば200%楽しいはずだ。

6月3日追記

あらためてテレビアニメシリーズをみたら、この曲のインストバージョンが劇伴として何度も使用されていたことが確認できた。

ススメ☆オトメ ~jewel parade~

CINDERELLA PROJECT

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最後に紹介するのは、デレステ約200曲の中で僕がもっとも愛している曲である。初めてデレステをインストールして何曲か遊ぶ中でこの曲に行き当たり、気づけば肩でリズムを取りながら遊んでいたものだった。

改めてこの文章を書くためにリピートで聴いているが、もうすでにイントロのギターのワンストロークからしてエモい。哀愁感あるイントロから、ワウの効いたカッティングギターとアタック強めの4分刻みのベースを基調にしながら、丁寧に音の厚みを増しつつサビの大団円に向けて積み上げるようなきれいな展開。さらにサビからアウトロへ抜ける際の力強いストリングスアレンジも幸せ以外の何物でもない。完成されている。

そしてシンデレラガールズの世界観を真正面から捉えた、森由里子による力強い歌詞である。よく比喩の巧みさで引き合いに出されるのは2番のAメロ、《夢はダイヤ だから転んでも傷は残らない》のくだりなのだけど、僕が好きなのはゲームには登場しないCメロだ。

《また笑いながら また夢見ながら また歌いながら ねぇ明日へ》

永遠のアイドルなんて現実には存在しないし、それが二次元のコンテンツであろうと支えるのは人間である以上、やはり永遠ではありえない。わかっているけれど、けれどもこのくだりに僕は、いつまでも目を輝かせながら夢を描き、前を見据えて歩きつづける少女たちの群像を眼前に見るのである。

死ぬまでにライブでこの曲を全身で感じる体験はしておかないといけないなとこの文章を書きながら思った。

6月3日追記:Memories

LOVE LAIKA

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ひとつ忘れてた、というかAngel Breezeとどっちにしようと思いながら、なんとなくこちらを落としてしまっていた(ツッコミくださった @evian さんありがとう)。

アイドルの原風景という意味では共通しているのだが、よりこの曲が深く刺さるのは、私の大好きだったWinkの影響を感じるからなんだろうと思う。曲のつくりはWinkが歌っていた80年代ユーロビートとは異なる。どちらかというと、Tommy february6に代表されるような、2000年代にリバイバルさせた80年代風ポップスという色合いが強い(そういや一度自分のMixで、この曲とTommyの『je t'aime je t'aime』をつなげたことがあった)。

歌詞はシンデレラガールズの楽曲の中では極めて珍しいくらいストレートな別れの歌で、そこも際立っている。

自分のWink好きって小学生からなんだけど、やはり当時は人に言えず隠していたし、中学生になってCD借りて聴くようになってもひっそりと楽しんでいたものだから、なんとなくおおっぴらにしにくいという癖が未だにすこ〜しだけ残っているし、あとそういう自分の個人的な好み(歌っている人たちへの贔屓目とか)のために客観的にレビューしづらいなというのもあって無意識に避けてしまったのかなあと思っている。

さいごに

いかがだっただろうか。結局のところ僕の好みの曲を熱っぽく語るエントリでしかなかった気もするが、できるだけキャラクターやゲームの文脈を踏まずによさを説明したつもりではいる。

ところで田中秀和という人がいる。MONACAという音楽制作会社で数多くのアイドルマスター楽曲のコンポーズを手がけている人だ。実際にここに選んだ楽曲のうち、

  • Star!!
  • ススメ☆オトメ
  • STORY
  • イリュージョニスタ!

の4曲が彼の手による作品となっている。おおよそ私は彼が作曲・編曲した曲に全幅の信頼を置いていて、この4曲の他にも素晴らしい曲をいくつも作っているので、ぜひこのエントリから興味を持たれた方は、ぜひこの作曲者から追いかけてみていただきたい。

また、今回は選ばなかったけれど登場キャラクターやストーリーを知っていると味わい深い曲もたくさんあるので、ぜひゲームの方もプレイしていただければ。

最後に『アイドルマスターシンデレラガールズ』の楽曲制作スタッフさんへのインタビュー記事をご紹介しておく。これも読み応えがあるのでぜひ。

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