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大阪のウェブデザイナー・コワーキングスペース運営者のブログです

コーヒーをもらいにいったら次の瞬間買うことになっていた話

初夏の日差しまぶしい連休終盤の午後のこと。

自動車の整備の帰り、ガソリンが心もとなかったので見知らぬ土地のガソリンスタンドに入った。ENEOSの新業態店舗で、セルフガソリンスタンドの事務所部分がなんとドトールコーヒーになっているというものだ。

給油の前にタッチパネルでコーヒーや軽食が注文できる。またタッチパネルから注文すると20円引きということだ。待たせることなくコーヒーが提供でき、また事前注文があることでオペレーションもラクになるがゆえの値引き、ということなのだろう。うまいもんだなと思いながらも、コーヒーまではいいかなと普通に給油を終えた。

レシートを受け取ると、その端に

ドリップコーヒー引換券
当日限り有効
今すぐ店内へ!

というような文句の紙がついている。

あら太っ腹、給油したら小さなサイズのコーヒーでも淹れてくれるのかしらと思い場内の店舗に入り、店員にその引換券を渡す。

すると「ありがとうございます、はいどうぞ! ご自宅でお飲みください」とアルミ包装に包まれたドリップバッグを渡された。

あーなるほど。

なるほどね。

「ドリップコーヒー」っていうのは淹れたコーヒーでなくて、家でお湯を注いで作れるドリップバッグのコーヒーのことね。

とっさのことで軽く混乱しつつも納得して「ドリップコーヒー」を受け取ったその瞬間、店員がこういった。

「よろしければ、ご一緒に冷たいお飲み物でもいかがでしょう?」

あーなるほど。

なるほどね。

撒き餌か。その「ドリップコーヒー」は。
車にガソリンを入れにきた客は移動中であり、休憩したいというよほどの欲求がない限りコーヒーショップの店舗には足を踏み入れない。だからとにかくまず店舗に入れたい。だからこそのあの券面のテキストだったわけだ。

いやー断るだろ。ここは。別にウソはつかれてないけどちょっとだけ騙されたみたいじゃないか。よし、断るぞ、断ろう…

「じゃあアイスコーヒーお願いします」

「サイズはMでよろしいです?」「はい、Mで」「280円でございますー」「はいはいー(財布を出す)」

自分でびっくりした。見事に成約しちゃってるじゃん。釣られちゃってるじゃん。

でも、私は確かにそのときアイスコーヒーが欲しかったのだ。いや、つい今しがた「欲しくなってしまった」のだ。

ドリップコーヒー引換券をもらい、冷たいコーヒーが飲めると思いながら冷房の効いたコーヒーショップの自動ドアをくぐり、店内に立ちこめる挽きたてのコーヒーの香りが鼻に入った時点で私がアイスコーヒーを飲みたい気持ちはもう最大限になっていた。

多少の齟齬があろうとも、予想外のお金を払おうとも、私はアイスコーヒーが飲みたかったのだ。たかが280円である。

キンキンのアイスコーヒーMをストローから吸い込み、ドリンクホルダーに差し込んで私は少し幸せな気持ちでガソリンスタンドを後にしたのだった。

が。

が。後から考えるとなんだか微妙な気持ちになってきた。やっぱりちょっと騙されてんじゃないか自分。

決してメチャクチャ悪い気持ちでもない、でもちょっと惜しい気もする。そんな微妙な体験だった。あえて、あえて言えば「ドリップコーヒー引換券」という曖昧な表現でなく、インセンティブの内容(つまりはドリップバッグのこと)はもうちょっと正確に示したほうがいいんじゃないかとは思う。

いただいたものがドリップバッグであったとしても、ある程度は店頭売りのコーヒーにコンバージョンするんじゃないか。私はコンビニでトイレを借りたらお礼になにか買うような人だからそう思うだけかもしれないけれど。

そんなゴールデンウィークの終わりだった。